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14「仏教の秘密」禅と念仏の合体

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日没時に、山頂に行って念仏を唱える永明太師(雑誌「浄土」任新宇画)着色

秘密14 禅と念仏の合体の効果

自力の禅と他力の念仏は、日本でもおなじみの修行法であるが、この対極的な方法が、中国仏教では一つの宗派で実践されてきた。

中国の仏教は、発展期の「前期唐仏教」と衰退期の「後期唐佛教」の2つの期間に分けることができる。

唐以後に禅と浄土思想(念仏)が混合したのは、主に唐の道教に帰依した第18代皇帝武宗(ぶそう)の、仏教に対する弾圧(845)以降である。中国の仏教が唐の期間に頂点に至り、8つの主要な宗派が栄えた。しかし仏教の迫害は、仏教哲学を志向した宗派(例えば天台宗華厳宗)の活力を一掃した。実践を指向する禅宗と浄土宗は、迫害後に存続した唯一の残りの「生きた」宗派になった。彼らが生き残ったのは、哲学学派のようにもっぱら経典に頼る必要はなかった。そして為政者の援助に依存せずに生きていけ、どこででも修行することができたことが大きい。

●自力と他力の結合

生き残った禅と浄土仏教は、唐仏教以降に単純で実用的、柔軟で近づきやすい「禅と浄土」宗の混合主義が生まれた。最終的な解脱は、禅と念仏の二重の実践を通して行われた。禅と浄土教の混合主義は、中国仏教の他のいかなる特徴よりもユニークである。「禅」は自力を通して、念仏は阿弥陀仏への帰依を強調する「他力」を。これらの2つの異なるパターンの同時実践は、唐以降に観察された。この運動の推進と大衆化を導いたのは、永明延寿(904-975)である。彼は卓越した禅師であるとともに、浄土念仏の実践者であった。

出典 Heng-ching Shih「THE SYNCRETISM OF CHINESE CH'AN AND PURE LAND BUDDHISM」l(1991)