39 富豪の世界 GHQの財産調査(1945年)
GHQ (連合国総司令部)の占領政策は、財産の多い華族の梨本宮伊都子の身辺にもおよんだ。梨本伊都子(いつこ)は、梨本宮守正王(もりまさおう)の妃。鍋島直大侯爵の令嬢。
昭和20(1945)年10月28日、伊都子のもとに、各宮家の全財産調査の話があった。宮内省が言うには、「米司令官より、宮内省の全財産をしらベて書出す様にとの事で、各宮家もすべて書出す様に」とのお達しであった。
「三井信託にあづけた宝石類は、ひとまず引きとり、取しらベの上、宮内省に保管することになった。」(昭20・10・28の日記より)
「30日 三井信託に預けた宝石を出す。午後は宝石の分け方をして、全部宮内省にあづけても、万一とられたらそれきり故、少しく残し、分けた。又、三井信託の方も一寸にして、再び金庫の約束の日まで入れておく事にする」(昭20・10・30の日記より)
●梨本宮家の財産目録(「 終戦関係書類」昭和20年11月より)
1. 現金や譲渡可能な手形など
・ 債権類 9400円 ・株券 141万1525円 ・現金 52万7511円 総額 194万8436円
2.土地 7万4 580平米(231万9534円)
3.建物 1526平米(17万9027円) 4.宝石 16点 8万円
総額 452万6998円
(編者註:1945年当時の1円は、現在の約150円に相当するとして、総額452万円は6億7800万円にあたる。 資料/小田部雄次著「梨本宮伊都子妃の日記」小学館1991)