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21「仏教の秘密」 兜率浄土

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●兜率(とそつ)浄土で説教する弥勒菩薩

秘密21 兜率(とそつ)浄土の役割

 仏教が伝えている浄土の中で、最も中国に知られているのが阿弥陀の住む「西方浄土」である。

 一方、兜率天にある「弥勒(みろく)浄土」が中国に入った時には一時流行したが、阿弥陀浄土が評判になってからすぐに衰えた。しかし諸方の浄土の中で、「弥勒浄土」は一番早く現れ、その役割も重要である。

●兜率の内院と外院

 兜率天は宇宙の中央の須弥山山頂の上方にある。この天界は、内院と外院があり、内院は次の生涯には仏と成る補処菩薩(菩薩の最高位)が説法する場所とされている。「内院」は弥勒菩薩の説法する場所、「外院」は欲界の天人の住む所で、ここでは仏法を聞くことはできない。

 兜率天の内院は、その弟子もここで一緒に説法を聞いて修行し、将来弥勒菩薩と一緒に地上に人間に生まれる。釈迦も成仏する前は、兜率天にあって人間になってから成仏した。

チベット仏教の聖者

 チベット仏教の中興の祖アティシャ(982-1054)は死後、兜率浄土に生まれ、その縁で彼の弟子も多くが兜率浄土で修行しているといわれている。またゲルク派のツオンカパ師(1357-1419)も同じくこの浄土に生まれ、人間世界で成仏するために兜率浄土にいるという。

出典 単増多傑著「チベット・タンカに見る極楽世界」陜西師範大学出版社(2008)