13「仏教の秘密」世界の始まりと終わり
秘密13 世の中はなぜ悪くなるか
仏教の終末思想は、一神教の一回限りの終末ではなく、創造主のいない永劫回帰の終末思想なのである。仏教(倶舎論)では人間は進化が頂点に達すると、今度は退化の方向に進むというミラー対応で進行すると言うのである。
仏教の長期時間の単位は劫(こう)で、一劫の長さは、巨石に3年に一度だけ布が触れ、その石がなくなるまでの期間とされているため、定義は不明瞭である。もう一つの定義は人間の寿命が8万4000歳から、100年に1歳づつ減って寿命が10歳までになり、ここから折り返してまた100年に1歳づつ寿命が伸びて再び8万4000歳までになるまでの時間を「1小劫」という。
この1小劫が20回で「1中劫」という。この「1中劫」と次の「1中劫」の間に何もない「空劫」があり、次の「中劫」の時代がくる。これを「成劫」といい、天界や大地などの自然環境が作られる時代。そしてつぎの「中劫」が我々生物が住む「住劫」がくる。しかし3番目の「中劫」で再び生物が天災地変によって壊滅状態となる。これを「壊劫」という。そして最後にまた何もない「空劫」が来る。これが「成住壊空」というサイクルである。
我々に関係あるのは2番目の「住劫」で、ここでは成長と退化の繰り返しの20の「小劫」を繰り返し、次は「壊劫」が来て六道に含まれる天界までの全てが破壊されてしまう。そして再び「空劫」に入り、その後新たに「成劫」に入り「成住壊空」を繰り返す。このプロセスを永遠に繰り返すのである。
これをまとめると我々は今、「住劫」のなかの「第九劫(20小劫の9番目)」にあることになる。(鈴木暢「仏教文学概説」明治書院 昭5)