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12「仏教の秘密」医師ベルツと神智学者

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日本に講演旅行に来た神智学者オルコット氏(合成)

秘密12  神智学者が日本で仏教の講演を行った  

神智学者というとブラヴァツキー夫人(1831 – 1891)が有名であるが、初代会長はヘンリー・オルコット(1832 - 1907)である。1875年、オルコット、ブラヴァツキー夫人などがニューヨークで神智学協会を立ち上げた。オルコットの関心の中心は仏教で、1880年5月25日、オルコットとブラヴァツキー夫人は、セイロンのコロンボで正式に仏教徒として認められた。ここに滞在中、彼らは仏教の教義を編輯し、仏教の理解に努めた。

1889年、オルコットは仏教活動家の平井金三(1859〜1916)らの招聘で、2月9日に日本に到着。2月12日から3日間、知恩院の集会堂で講演をした。オルコットはこの後3ヶ月に、仙台から熊本までの33都市で76回の弁論会を行い、のべ20万人の聴衆を集めたという。以下の引用は、ドイツ人の医師ベルツ(1849 - 1913)の書いた「ベルツの日記」(1889年3月7日)からで、彼がオルコットに逢ったときの感想が記されている。

●3月7日(東京)

「夜、フェノロサ氏(美術史家1853 - 1908)のもとで、神秘仏教の使徒オルコット師にあう。師は仏教徒真宗派に頼まれて日本中を巡歴し、講演を行っている。だが、聞くところによれば、真宗の人たちは、あまり師から教化されていないとか。常然の話だ ー というのは、師の教えるところは、アミダなどを信仰しない南方の哲学形式を神秘的空想、すなわち(ほとんど信じられないのだが、事実は)極端な奇蹟の信仰と混和したものであるからだ。

 師の話し振りは落ち着いていて、明瞭で、理性的ではあるー がしかし、話がブラヴァツキー女史のことに及ぶと、もういけない! そうなると、何もかもおしまいだ。(中略)専門の領域に触れない限り、師の話ははっきりしていて、事実また面白い。ブラヴァツキーに対する、まさに正気ざたではない奇蹟の信仰は、病的のものだ。師は仏教徒ではなく、ブラヴァツキー信者だ。だが、師の仏教は科学と相一致すると、師は主張するのだ!」

(出典「ベルツの日記」昭和26年9月5日発行 岩波書店