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3「仏教の秘密」仏陀の地獄行き

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前世での2人の聖者の出会い(コラージュ)

秘密3 仏陀はなぜ地獄に堕ちたか?

 仏陀は何度もの輪廻を重ねて35才で覚醒したため、その後の輪廻がなくなった。

しかしその彼の長い前世物語が『本生経』(ジャータカ)に説かれている。

これを読むと、仏陀は魚や兎などの動物から、女性や比丘(修行僧)、そして菩薩から転輪王まで転生している。そのなかから、彼が地獄に堕ちた場面を紹介したい。

●地獄に堕ちた仏陀

 仏陀は前世で比丘であった時に、死後に地獄に堕ちている。その話は次のようである。

彼が60才を超えた修行僧の首達(しゅだつ)のとき、彼は5千人を教化した。一方惟先(いせん)は若くしてその智慧が深く、諸国を回って6万人を教化した。あるときこの2人が出会うと、首達の弟子は惟先の方がすごいと思い、彼について行こうと願った。そこで首達はもろもろの学者に、「惟先は年若く、智慧はまだまだ」と言った。惟先はその噂をきき、その夜黙ってその国を去った。その理由は、学者に首達を供養させようと願ったからである。

 首達は惟先を誹謗したため、死後、60刧(1刧は約10万年)のあいだ地獄に堕ちた。人に生まれ変わっても60刧のあいだ舌はなかった。仏陀は罪の償いをおえると、それ以前の功徳と自らの努力によって仏となることができた。仏はもろもろの学者に告げて言う。「その首達とはすなわち我が身のことです。また惟先とは、いま阿弥陀仏になっているお方です」と述べた。(『本生経』55章「仏、警喩を説く経」『国訳一切経 本縁部11』(大東出版社)