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8 プーチンの秘密 情報戦

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ロシア・グルジア戦争(2008.8.7~8.16)

 ロシアはアメリカの先端技術の兵器ではなく、質、量ともに相対的な軍事力の弱さを自覚している。そうした実情から「ハイブリッド戦争」へと視野を広げ、軍事力の遅れを取り戻そうと足掻いている。以下はその情報戦略を解説した「ウクライナにおけるプーチンの情報戦」(2015)の抜粋である。

 ロシアの国際政治における攻撃的な緊張は、プーチン大統領が2007年2月にミュンヘンで行った演説で、自らの立場を表明した。
 「ロシアはもはや米国主導の国際関係の単極モデルを受け入れず、ロシアの地政学的利益を追求するために、独自の独立した外交政策を実施する」と主張した。
 同じ月に、アナトーリー・セルジュコフがロシアの国防相となり、軍隊の腐敗と非効率との戦いを任された。セルジュコフの任命は、最終的に情報運用を組み込むロシアの攻撃戦略の変化を示したが、軍事改革はすぐには行われなかった。
 ロシア軍の本格的な改革は、ジョージアグルジア)との戦争におけるロシアのパフォーマンスが変化の必要性を示した2008年8月に開始された。
  ロシア軍は、南オセチアアブハジアからグルジア人を追い出すことに成功したが、より技術的に進んだ西側装備のグルジア軍と戦う際に、時代遅れの装備と不十分な訓練に苦しんだ。
  したがって、グルジア戦争は、ロシア軍の欠点の多くを浮き彫りにした。いくつかの推定によれば、ロシア軍は、一部には不十分な設備のために、紛争で撃墜された4機のロシア航空機のうち3機の墜落の原因となった。
 クレムリンは、グルジア戦争後の過ちを調査した。チェチェンジョージアでのロシアの大規模な軍事作戦と西側の対応を見て、政権は改善の余地があると判断した。改革の全体的な目標は、軍隊の規模を縮小し、効率と機動性を高めることだった。
◉情報戦の主な原則
 ロシアの現代の情報戦は、ソビエトの「反射的制御=Reflexive control」を現代の「地政学的文脈」に適応させている。「反射的制御とは、対戦相手に特別に準備された情報を伝えて、アクションの開始者が、こちらの望む所定の決定を自発的に行うように仕向ける手段である」とティモシーL.トーマス(Timothy L. Thomas)は書いている。
 言い換えれば、「反射的制御」は、制御側が相手の認識を妨害することによって、無意識のうちに悪い決定を下すように相手に影響を与えることができる方法と言える。
 戦争の文脈では、対戦相手の推論と行動を予測して模倣する能力が最も高い行為者が成功する可能性が高くなる。
「反射制御」に関するソビエトの学者の一人ウラジーミル・ルフェーブル(Vladimir Lefebvre 1936~2020)は、次のように述べている。
 「我々は敵の情報チャネルに影響を与え、メッセージを送信することができる。そして送り出す情報が我々に有利な変化するのを待つ。敵は最も現実的な最適化の方法を駆使して、最適な決定を見つける。しかし、それは真の最適ではなく、我々が事前に推測した決定である。我々自身の効果的な決定をするために、敵が真実であると信じる情報に基づいて、敵の決定を推測する方法を知る必要がある。敵がモデル化するユニットを、異なる条件下でシミュレートして、最も影響力のある情報を選択するのである」

出典 Maria Snegovaya  "PUTIN’S INFORMATION WARFARE IN UKRAINE " ISW 2015