シュールの本棚

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5 戦争経済 ベトナム戦争特需(1965-1975)

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敵陣地へ前進したベトナムの韓国兵(1972)

 戦争が国の経済発展の起爆剤になるのはどんな時か?伸び悩んでいた韓国経済にとって、ベトナム戦争がまさにそうであった。ベトナム戦争は、米軍の本格的投入が始まった1965年から75年4月のサイゴン陥落まで10年の長さがあった。この戦争で米国は1000億ドルを上回る戦費を投じたが、その一部が韓国の戦争特需となったのである。

  韓国は特需を実践する国であるとともに、その見返りに韓国軍の派兵を行った。その派兵数は、65年2月の陸軍工兵大隊の派兵から、撤収する75年までに、2個正規師団、1 個海兵旅団など、延べ31万名に上った。次に多い派兵国のタイ派兵数は3万8000名で、韓国の8分の1であった。

 韓国軍のベトナム派兵は、朴政権の積極外交によって実現された。

 韓国軍派兵に対する米国側の見返りの内容は、66年3月4 日に作成された「ブラウン覚書」によって示された。この「覚書j は、韓国軍による現代化作業と、ベトナム参戦による補償などの付帯条件によって構成された。特需全体の規模は、1965年から72年までの累計で10 億2200 万ドルに達している。具体的な項目は、南ベトナムへの輸出(物品軍納を含む)、建設および用役軍納、軍人および技術者の送金、その他(特別補償支援)となっている。1965 年から72 年までの累計で、最も多いのが用役軍納で2億3320万ドル(全体の22.8%) である。(資料 鄭章淵「韓国財閥史の研究」2007) 

◎韓国軍の参戦

 ベトナム戦争に参加した韓国軍は、アメリカ軍に比べて、村を対象にした小規模の掃討作戦に多く動員された。朴韓国大統領は、ケネディ米大統領に、「アメリカの過重な負担を軽くするため、韓国軍をベトナム戦争に派兵させよう」と提案した。多くの海外の専門家たちが指摘したように、アメリカの「傭兵」として韓国軍に任された任務は、厄介で、人命損失の可能性が高いだけでなく、民間人の虐殺の危険性が高い掃討作戦だった。数百万名の命を奪い去ったベトナム戦争において、韓国軍によって虐殺された民間人は5000名という。(資料「韓洪九の韓国現代史II」平凡社 2005)