シュールの本棚

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4 戦争経済 軍事株が儲かるのはどんな時か

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アメリカ軍のF-35C

 「戦争が始まれば株どころではない」と思うはずだが、国外での戦争なら対岸の火事として、多少ゆとりはある。中近東などの石油輸出国が戦場になると、原油供給が不確実となり、原油価格が暴騰すれば消費が冷え込むので、当然物価高に直結して、関連株も下がると考えられる。

 そうでない場合、軍需産業は、戦争になれば武器の売買で大きな収益を得られると誰もが想像する。以下は、広瀬隆の株論である。彼は過去の例を調べてみて「第一次・第二次大戦、朝鮮戦争ベトナム戦争のような長期戦にならない限り、イラク攻撃のような短期戦争がもたらす軍需産業の利益は一過性である。工場を一時的に肥大化させるとバブル経済と同じ結果となり、かえって終戦後のレイオフが一層ひどくなる。これは91年の湾岸戦争で実証ずみで、90年代のアメリ軍需産業は冷戦崩壊の波を乗り超えられず、次々に経営破続に退い込まれ、大合同を迫られた。」(広瀬隆「世界金融戦争」2008)

●高価な戦闘機

 アフガン攻撃による軍需産業の株価上昇ブームも、2002年に再び収縮した。第一位のロッキード・マーティンの株価が伸び続けたのは2001年10月に2000憶ドル(23兆円)を超える金額の受注に成功した統合打撃戦闘機ジョイント・ストライク・ファイター(JSF)のためである。2009年4月6日、米国国防長官ロバートゲーツは、米国が計2,443機のJSFロッキードマーティンX-35)を購入すると発表した。F-35Aのコストは2002年の5,000万ドルから2010年には7,400万ドル(85億円)に上昇した。日本政府も2021年にF35を購入を発表(合計で147機の計画)、今回の承認額は約231億1000万㌦(約2兆4700億円)となった。

なお、2022年1月26日、南シナ海アメリカ軍のF-35Cが、原子力空母への着艦に失敗し海に落下した事故が発生している。