シュールの本棚

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7 芸術家と金 ドストエフスキー

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コラージュ/カジノに入浸りのドストエフスキー

 ロシアの作家ドストエフスキー(1821-1881)は、空想的社会主義サークルの一員となり、1849年に官憲に逮捕され、死刑判決を受けるが、銃殺刑執行直前に特赦が与えられ、シベリアに流刑となる。この時の体験後に『死の家の記録』(1869) を著す。刑期を終え、1858年にペテルブルクに帰還する。

 1866年の11月までに出版に新しい小説を含む彼の作品集出版契約で、3000ルーブルを受取る契約を結んだ。彼はすでに多くの借金を抱えていたので、ドストエフスキイー自身が使える金はわずか175ルーブルしかなかった。この金をもって、彼はウィスバーデンに出発。着いたのは1866年8月10日頃で、旅行中彼はルーレットを試みて悉く失敗した。

 彼がこの賭け事を体験したのは、1863年の夏、初めて外国に旅行した時で、1000フランを儲けたからである。今回の旅行では更に賭博を試み、8月15日までに所持金のすべてを無くしてしまった。彼は多くの知己へ手紙を出して借金を要求し、コペンハーゲン経由でペテルブルグに帰って来た時には、無一文になっていた。1866年に『賭博者』『罪と罰』を発表し評判となる。1880年に、『カラマーゾフの兄弟』を脱稿。その数ヵ月後の1881年1月死亡。