10 ローマの盛衰 アリタリア航空の危機
アリタリア航空は、1947年9月に設立されたイタリアの航空会社。1960年代以降に、ダグラスDC-8で日本路線へ就航した。以下は同社の苦難の歴史である。資料は日本語ウィキペディア。
●経営悪化
同時多発テロ以降経営が悪化し、株式の49%を政府が保有した。2007年12月、エールフランス‐KLMが、同社の買収に一株あたり0.35ユーロで入札したと発表。ルフトハンザドイツ航空の傘下のエアワンも、同社の買収意向を見せた。
2008年3月、アリタリアはエールフランス-KLMの買収案を受け入れたが、労働組合側が反対して買収を断念した。
●分割による再建計画
イタリア政府は、航空事業会社から収益の見込める部門を航空事業会社に引き継ぐ方針を固めた。2008年8月、アリタリアは分割案に同意し約1,800億円の負債を抱えて会社更生手続きに入った。
分割後の航空事業部門会社はベネトンや大手銀行などの投資を受け入れ、約7,000人の人員削減をする。同年9月、主要な労働組合が合意し分割救済案が実施され、分割後の新会社は「イタリア航空」として10月15日に発足した。
2009年1月、同社は完全民営化を果たし、名称も「アリタリア-イタリア航空会社」に変更したと発表。
●エティハド傘下へ
その後も経営難は続き、2013年筆頭株主だったエールフランス-KLMは追加出資を見送り、同社傘下から外れた。2014年8月、アブダビに本拠を置く国営のエティハド航空がアリタリアの株式の49%を取得する。エティハド傘下後も経営悪化は止まらず、2017年には経営危機となる。同年5月事実上倒産したが、営業は継続している。再びイタリア政府管理下となった。
●再建計画とその白紙化
2019年に、イタリア国鉄主導で経営を再建する案が浮上し、同年7月、アトランティアとデルタ航空がスポンサーとなり、国鉄と共同で経営を行う方針が内定した。
●国有化と経営規模縮小へ
2019年末からの新型コロナウイルス感染による航空需要の急激な落ち込みで、会社は収益の97%の減少を記録。2020年4月に産業大臣が完全国有化を発表した。計画では、機体数を現在の113機から25機-30機に削減、従業員数も1万1,000人から3,000人に、長距離路線は全て削減し中短距離に特化するとされた。
●2021年の現状
アリタリア航空は現在資金が不足しており、2021年5月の給与の残りの50%を約1万2,000人の労働者に支払えない状態。組合は抗議の一形態として、6月18日の航空輸送の停止を確認した。(www.agi.it 2021.6.4)