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5 ローマの盛衰 古代ローマ時代のローマの洪水

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1686年のパンテオンの内部への浸水 (J. Tischbein画)

 水の都はベニスと言われるが、洪水の都ローマという形容は余り聞きなれないものである。しかしローマでは毎年テベレ川の水かさが増え、それによるマイナーな洪水は5〜6年に1度、大きな洪水は28年ごとに起きていたのだ。 こうした研究成果を発表したのが、グレゴリーALDRETE著の『古代ローマのテヴェレ川の氾濫』(2006)である。

 テヴェレ川(Tevere)は、ローマ市内を流れているイタリアで3番目に長い川で有名。古代の資料には、紀元前414年から西暦398年の812年間、計33年の年に42回の洪水の記録が残されている。 そのなかでも紀元前54年と西暦69年の洪水は、人びとを溺れさせるだけの水量があった。

 本書では、洪水の被害や人びとの心理、対策などが記されており、これにより大都市ローマの別の顔を知ることができる。 上の図のように17世紀にもローマのパンテオンが浸水し、ボートが行き交う様子が分かる。
出典 Floods of the Tiber in ancient Rome. by Gregory S. Aldrete, The Johns Hopkins University(2006)