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5プーチンの秘密 オリガルヒ(新興財閥)

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オレグ・デリパスカ氏

 1991年7月、ボリス・エリツィンがロシア大統領に就任すると、1992年から1994年のいわゆるバウチャー(無償で国民に配分された株式引き換え券)民営化プログラムにより、所有権の優先的な配分が利益をもたらした。ロシアの天然ガスや石油などの国内価格と、世界市場価格との大きな違いがあり、彼らはロシア市場ではなく、利益の大きな国に投資して売り上げを蓄えオリガルヒ(新興財閥)に成長した。
 ソビエト後のビジネス寡頭制には、政府関係者の親戚や近親者、さらには政府関係者自身が含まれた。これらのグループの一部のメンバーは、エリツィン政府によって非常に安価に国の資産を取得することで、莫大な富を獲得した。
 エリツィン大統領の任期中(1991年から1999年)、オリガルヒは1996年のエリツィンの再選に資金を提供する役割を果たした。政府の財政的決定に関するインサイダー情報によって、さらに富を増やすことができたが、1998年のロシアの金融危機は、一部のオリガルヒに大きな打撃を与え、多くの財産を失った。

プーチン時代のオリガルヒ
 2000年から2004年の間に、プーチンはいくつかのオリガルヒと権力闘争に従事し、プーチン政権への支持と引き換えに、オリガルヒの利権を温存した。
 プーチン大統領の任期中、多くの新興財閥がさまざまな違法行為、特に脱税のために政府中枢の支持を失い、彼らが起訴される事態に発展した。工業都市ピカリョボでは、約300億ドル(約3兆円)の資産を持ち、ロシアで最も裕福な人物として知られたオレグ・デリパスカ氏(1968~)のベーゼル・セメントを含む、3つの工場が経済危機のなか操業停止に追い込まれ、社会不安が巻き起こっていた。
 2009年6月、プーチン首相は、給与の不払いで解雇された労働者たちが、道路を閉鎖しているピカリョボを訪れた。ロシア・アルミニウムのデリパスカ社長は、プーチン首相の要求を入れ、工場の操業再開を約束する合意文書に署名した。(資料 afpbb.com 2009.6.8)
 2006年に漏洩した米国外交公電は、デリパスカを「プーチンが定期的に回る2〜3人のオリガルヒの中で」そして「プーチンの海外旅行における多かれ少なかれ恒久的な備品」と表現した。
 2022年2月24日、ロシアがウクライナに侵攻した後、プーチンとオリガルヒを制裁する前例のない措置が講じられた。アメリカを含む諸国による銀行口座凍結の制裁によって、標的とされたオリガルヒは資産凍結を避けるために富を隠し始めたが、事前に策を練っていたかは不明である。