シュールの本棚

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42 大富豪の世界 マカオカジノは成長するか?

ホテル リスボマカオ(向かって右)

 コロナでお金を失ったマカオを支えたアメリカのカジノ資本は、新たな課題に直面。マカオは、テーマパークやその他のアトラクションを建設して、ギャンブル依存度を下げるよう習近平政府から圧力がかかっている。

 マカオに数十億ドルを投資したMGMリゾーツ、ラスベガスサンズ、ウィンリゾーツ、および中国のライバルの3社のライセンスは12月に期限切れになる。7月初旬に発表された規則によると、今後10年間の運営を希望する場合は、「非ゲームプロジェクト」に投資するという追加の要件に直面する。

 マカオが新たなコロナウイルスの発生を抑制で7月11日にカジノ閉鎖を命じたが、さらに多くの財政的圧力に直面している。業者はすでに6月下旬に課された規則の下で運営されており、従業員数は通常の10%に制限されていた。
 金融アナリストはアメリカ人が免許を取得することを期待しているが、政府は入札は誰にでも開かれていると言っている。

 マカオシンガポール、マレーシア、カンボジアのカジノからの潜在的な非中国人ギャンブラーをめぐる競争の激化に直面しているため、変化への圧力が高まっている。
 金融アナリストは、米3社が生み出す仕事と税収のために、ライセンスが承認されることを期待している。

 スロットマシン、サイコロテーブル、その他のゲームからの年間収益は、2013年に450億ドルに達した。これはマカオの男性、女性、子供1人あたり65,000ドルに相当し、ネバダ州の2021年の収益135億ドルの3倍以上に相当する。
 しかし、2020年に新型コロナが発生する前から、収益は減少していた。北京は、本土のギャンブラーが訪れる頻度の管理を強化した。マネーロンダリングと脱税の取り締まりでマカオへの金融移転に抑制が課された。

●収益の減少とその未来
 パンデミックが発生する前の2019年までに、ギャンブルの収益は2013年のレベルから19%減少して364億ドルになった。2020年には、さらに80%減少してわずか76億ドルに。昨年、収益は108億ドルに戻ったが、それは2013年から75%減少している。政府のデータによると、世界で最も観光に依存しているマカオの経済は、2019年以来半分に縮小した。
 ギャンブル以外の資産を追加すると、マカオもラスベガスのようになる。ラスベガスでは、カジノがローラーコースター、音楽、ショッピングセンター、アート展示、ウォーターパークで家族やギャンブラー以外の人を引き付けようとしている。しかしエンターテインメント・パークとテーマパークは運営に費用がかかり、収益には疑問が残るという。(the diplomat-com 2022年7月12日)

41 富豪の世界 美術蒐集家

イェール大学英国美術センター(Center for British Art and Studies )

 ボール・メロン(1907 - 1999)はアメリカ第1のアート・コレクターであり、蒐集については非凡な才能の持主である。主としてフランス印象派と18~9世紀のイギリス絵画中心に集めているが、好きな絵な買い、しばらく持っていて、それを美術館へ寄付するというパターンを続けている。  メロン財閥は、一代目の祖父トマス・メロンが1870年にメロン銀行を創設したのにはじまる。二代目の父親のアンドリュー・メロン(1855 - 1937)は投資銀行の運営にかけては天才的な人物で、父親の資産を元に投資を行ない、フォード、ロックフェラーと並ぶアメリ三大財閥の一つにのしあがった。そして3代目のポールは、莫大な遺産をもとに美術品の収集にあてた。

 アメリカの税制は多額の金を息子に譲渡するいことを禁じている。そこで父親は財団を設立した。  ポールが寄付した金額をみれば、1933年から91年の間に、彼がどれだけ財産を相続したかがわかる。総計すると6億1100万ドル。そのうち1億4300万ドルは、父親が創立したワシントンの国立美術館へ。1億6400万ドルは、彼が英国美術のために建てた「イェール大学英国美術センター」に寄付した。ポールが美術品収集をはじめたのは、父が亡くなって10年してからだった。

 印象派のうち、ドガの彫刻コレクションでもメロン氏は有名だ。55年、ニューヨークのノドラー画廊にメロン氏が立寄った際に、ドガの彫刻の話が持ち出された。この好機を逃さず、メロン氏は40万ドルで一括してコレクションを購入した。しばらくして、うち5点をパリのルーヴル美術館へ、3点をケンブリッジのフィッツウィリアム美術館に、そしてワシントンの国立美術館に寄贈している。
 ポールは人文科学の進歩を目的として、1941年にオールド・ドミニオン財団(バージニア州財団)を、1945年に心理学者ユングの翻訳を出版したボーリンゲン財団を設立している。その後姉アリサの設立したアヴァロン財団と統合、その名を父に記念してアンドリュー・メロン財団と改称している。(出典 ノーマン他著「世界のトップ・コレクター」新潮社1993)

40 富豪の世界 ロシア人が好むドバイの不動産

高級なエマール・ビーチフロント

 ウクライナでの戦争で、ロシア語を話す個人とその施設の制裁の影響で、裕福な投資家は自国から逃げ出し、ドバイに避難所を見つけることになった。ロシアでは1万5000人の百万長者が脱出したことになっている。
 確かに、ドバイ土地局によると、ドバイはここ数年で最もホットな不動産市場となり、このセクターの売上高は4月に前年比45%、5月に51%増加している。
 ドバイの不動産会社は、2022年前半にロシアやその他の旧ソビエト諸国からのバイヤーへの売り上げが、前年比で100%増加したと述べた。ロシア語を話す顧客を専門とする業者の資産売却は、前年比2倍の20億ディルハム(740億円、1UAEディルハム =37.43円で換算)となった。 
●超金持ちの行き先
 ドバイの証券会社「ベターホームズ」は、4月に発表されたランキングで、ロシア人が第1四半期に、ドバイの不動産の上位5番目の購入者に上昇したという。また、ロンドンを拠点とする投資会社の「ヘンリー&パートナーズ」は、6月に「アラブ首長国連邦が今年の超富裕層の世界トップの目的地になり、4000人の新しい億万長者を受け入れる」と予測するレポートを発表した。 

●水上のヴィラ
 ロシアのバイヤーが希望する物件についても明確な傾向があると言う。ドバイに本拠を置く「プライムキャピタル不動産」のマネージングパートナーは、「高級物件で、特に海の周りのものは何でも」と語った。彼は、パーム・ジュメイラのような人気のあるエリアだけでなく、街の海岸沿いの高級なエマール・ビーチフロントとラメールのプロパティをあげた。 
 さらに購入者は、投資だけでなく個人的な使用にも、保有および賃貸する不動産の組み合わせを求めているが、ほとんどは投資用という。
 購入者がフロア全体または複数を購入する「ブロックディール」が一般的という。高級マンションの1階は、平均およそ700万ドルから1000万ドルという。ロシア人は常にドバイの不動産に投資している上位10カ国の1つで、2月以降急増しており、「これらのバイヤーの一部は他の国でも資産を清算し、それらの資金をここに移している」と付け加えた。(出典 www-cnbc-com 2022年7月7日)

39 富豪の世界 GHQの財産調査(1945年)

梨本宮伊都子(1882 - 1976)

  GHQ (連合国総司令部)の占領政策は、財産の多い華族の梨本宮伊都子の身辺にもおよんだ。梨本伊都子(いつこ)は、梨本宮守正王(もりまさおう)の妃。鍋島直大侯爵の令嬢。
  昭和20(1945)年10月28日、伊都子のもとに、各宮家の全財産調査の話があった。宮内省が言うには、「米司令官より、宮内省の全財産をしらベて書出す様にとの事で、各宮家もすべて書出す様に」とのお達しであった。  
「三井信託にあづけた宝石類は、ひとまず引きとり、取しらベの上、宮内省に保管することになった。」(昭20・10・28の日記より)
「30日 三井信託に預けた宝石を出す。午後は宝石の分け方をして、全部宮内省にあづけても、万一とられたらそれきり故、少しく残し、分けた。又、三井信託の方も一寸にして、再び金庫の約束の日まで入れておく事にする」(昭20・10・30の日記より)

梨本宮家の財産目録(「 終戦関係書類」昭和20年11月より)
  1. 現金や譲渡可能な手形など  
    ・ 債権類  9400円  ・株券 141万1525円  ・現金 52万7511円 総額 194万8436円
 2.土地    7万4 580平米(231万9534円) 
 3.建物    1526平米(17万9027円)  4.宝石 16点 8万円  
    総額  452万6998円
(編者註:1945年当時の1円は、現在の約150円に相当するとして、総額452万円は6億7800万円にあたる。 資料/小田部雄次著「梨本宮伊都子妃の日記」小学館1991)

38 富豪の世界 日本財閥の解体(1945年)

東京都中央区日本橋室町 三井本館

 1945年(昭和20年)8月15日の終戦記念日からおよそ38日後の9月22日、米国政府から示された「降伏後における米国の初期の対日方針」で、「日本の財閥の解体を促進」すべき旨が記された。  通知を受けた三井、三菱、住友、安田の四大財閥は、連合軍の要請が強固なことが判るとともに、まず安田財閥が自発的解体案を提示した。日本政府はこれに基いて、11月4日、解体に関する政府案を総司令部に提出した。
●財閥家族の支配力排除
 1946年11月26日、総司令部の日本政府あて覚書「財閥家族の財産を持株会社整理委員会に移管する件」によって、それまで大蔵省が管理したのを委員会に移した。同委員会の手で行われた5項、83社にわたる財閥会社の指定や、以下7点の対象となる56名が指定された。
 1. 財閥家族姓を名のる尊卑三親等及びその家族。
 2. 年齢性別を問わず。  
 3. 所有有価証券、現金、預余等合計百万円以上。  
 4. 当該会社発行総株式数に対し、持株率10%以上の株式などの所有者。
 5. 所有家屋500坪、宅地2000坪、農地山林50町歩以上。  
 6. 企業支配力または経営発言力の程度。  
 7. 過去の経歴。
 委員会は、持株会社及び以上の指定者の所有する有価証券を譲り受け、これを証券処理調整協議会等を通じて分散化した。
 こうして巨大財閥から中小財閥にいたるまで、解体または再編成され、日本経済全体は、こま切れの如く小分割の姿となった。(資料「日本経済年報72集」東洋経済新報社 1951)

37富豪の世界 アジア進出のプライベートバンキング

citi-tower(香港)

 スイス発祥の銀行の一形態で、一億円以上の資産を持つ顧客に資産管理、資産運用を行うのが、プライベートバンキングの役割である。一番資産残高が高いのがスイスのUBS。1998年のスイス銀行コーポレーションとスイス・ユニオン銀行との合併で、「UBS」(正式社名)となる。
こうした中、「Citi」バンク、HSBC香港上海銀行を母体として1991年に設立)などが、アジアの富豪層を狙って進出している。

●香港
「プライベートバンカー・インターナショナル」(2022.4.11)によると、香港、マカオ広東省南部の9つの都市で構成されるベイエリアには、4,240億ドル(2.7兆人民元)の総資産を持つ45万2000人以上の百万長者の家族がいる。そこで「Citi」は、中国のグレーターベイエリアに焦点を当てたプライベートバンキングの推進を強化するため、香港でより多くのウェルスマネージャーを採用する予定という。「Citi」は現在、香港で約4,600人のスタッフを雇用しているが、今年、さらに100人のプライベートバンカーをチームに加える予定という。

●インド
 HSBCホールディングスPLCは、アジアに焦点を当てた貸し手がインドを成長のための重要な戦略的市場として特定した後、1年以内にインドのプライベートバンキング事業を再開する予定であると述べた。
 HSBCは、グループ戦略の一環として、2015年にインドのプライベートバンキング事業から撤退した。収益性は高いが非常に競争の激しいインド市場では、富裕層向けのセグメントに外国人プレーヤーはほとんどいない。そこで同行は、今後3∼5年間でさまざまな事業セグメントでインドの顧客基盤を4倍にすることを目指している。(ZAWYA2022.6.30)