シュールの本棚

世界で日々起きていることは、現実を超えて進んでいる

8 有名人のスパイ  対日心理戦のザカリアス

f:id:danbuer:20211126081735j:plain

ザカリアスと「日本との秘密戦」(原書)の表紙

 エリス・ザカリアス ( 1890 - 1961) は、第二次大戦期の海軍情報部次長。

 1912年に海軍士官学校を卒業。1920年駐日米大使館付語学将校として来日。第二次世界大戦時、ソルトレイクシティ の艦長を務めた。

 1945年4月、海軍情報部から戦争情報局に転任。対日心理戦争の指揮をとる。日本政府や軍に和平を望むグループがあるのを確信したザカリアスは、海軍長官のフォレスタルを説得して、日本の和平派を後押しするプログラムに着手し、短波放送を用いた日本への心理作戦を実行した(ザカライアス放送)。

 ザカリアスの活動を受けて、フォレスタルは日本に対する「無条件降伏」の内容を緩和する支持者となった。

 ザカリアスの対日心理作戦は、大佐自身が、放送で日本の戦争指導者に直接呼び掛けることであった。毎週3回、15分程度の放送を行う。放送は二回繰り返され、日本語放送の後で同一内容の英語放送を行うことが決められていた。

 その趣旨は、「連合軍への、これ以上の抵抗は無駄なことを具体的に説明。日本はソ連の立場を甘く見ていることを指摘し、ソ連の対日参戦の可能性を説明する。そしてドイツの運命とは逆に、日本にはまだ生き残りの道があると強調する」ことであった。この放送は、戦争の終結を早め、米陸軍の日本本土侵攻計画の中止を可能にさせたという。(資料 ザカリアス「日本との秘密戦」朝日ソノラマ(原題 secrets missions 1984)