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20 モスクワの盛衰 モスクワ劇場占拠事件

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人質を助け出す特殊部隊員(写真 vampravda.ru/2019.10.24)

 2002年10月23日〜26日にかけて、ロシア連邦内でチェチェン共和国の独立派武装勢力が起こした人質・占拠事件。犯人側との交渉も杜撰で、人質の被害者も多い謎の多い事件であった。

・10月23日、午後9時5分、40名の武装勢力は、モスクワ中央部ドブロフカにある「シアターセンター」でのミュージカル「Nord-Ost」の観客と出演者916名を人質に取り、チェチェンに進駐してきたロシア軍の撤退を要求した。受け入れられない場合は人質を殺害、自分達も爆弾を使って劇場を爆破すると警告。これに対し、ロシア当局は武装勢力の要求を拒否した。
・10月24日午前0時、劇場は完全に封鎖されており、工作員は建物を押収したテロリストと連絡を取ろうとした。テロリストは15人の子供を解放し、女性、外国人、イスラム教徒を含む数十人を解放。午前8時の時点で、テロリストは41人を解放した。
・10月25日午後12時34分 、「赤十字」の代表は、テロリストに押収された建物から6歳から12歳までの8人の子供を連れ出す。
・10月26日、犯人は「朝までに自分達の要求が受け入れなければ人質を殺害する」という最後通告を行った。政府はこれに対し交渉を行うとの声明を出したが、実際は突入への準備が行われていた。
・10月26日午前5時10分。劇場の正面玄関を照らしている投光照明が消える。ロシア連邦保安庁FSB)の特殊部隊は、換気を通して建物に睡眠ガスを送り始めた。
・午前6時20分頃、特殊部隊アルファ部隊が突入。その際、特殊部隊は非致死性ガスを使用した。劇場内にいた大半はこのガスによって数秒で昏倒し、異変に気付いた武装グループの何人かと特殊部隊との間で銃撃戦が発生した。
・7時25分。ロシア連邦大統領補佐官は、人質の解放作戦の完了を公式に発表した。
・8時。ワシリエフ内務副大臣は、暴行の結果「36人のテロリストが殺され、750人以上の人質が解放され、67人が殺された」と報告した。

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解放された人質(ロイター)

●犠牲者
 公式データによると、人質の中から合計130人が殺害された(公的機関「Nord-Ost」の仮定によると、174人)。130人のうち、死亡した子供は10人。2003年9月20日、ロシアのプーチン大統領は記者団との会談で、人々は「ガスの作用の結果ではなく、脱水症、慢性疾患、彼らが建物に拘束されたことで死亡した」と述べた。
(資料 ロシア語「ウィキペディア」これには詳しい事件の推移が記されている。)